老人は実を摘まず、椅子を二つ持ってきた。
「熟すまで待とう」
ノアは座った。思い出すことばかり考えていたのに、待っているあいだのことは何も考えていなかった。
老人が湯を沸かす。遠くの庭で鐘が鳴る。知らない鳥が窓に来る。
これもいつか、忘れてしまうのだろうか。ノアは今日のことを手帳に書いた。実が熟すまでの一晩を、自分の記憶として残すために。
一晩だけ待つ。その約束が、庭の時間を変えてゆく。
老人は実を摘まず、椅子を二つ持ってきた。
「熟すまで待とう」
ノアは座った。思い出すことばかり考えていたのに、待っているあいだのことは何も考えていなかった。
老人が湯を沸かす。遠くの庭で鐘が鳴る。知らない鳥が窓に来る。
これもいつか、忘れてしまうのだろうか。ノアは今日のことを手帳に書いた。実が熟すまでの一晩を、自分の記憶として残すために。