橋の向こうでは、雨が逆さに降っていた。
地面から空へ、銀色の滴が帰ってゆく。ノアの靴は少しも濡れなかった。窓辺の老人は種を見ると、長いあいだ探していた本を見つけたように笑った。
「その庭の名前を覚えているかい」
ノアは首を振った。老人は返事を急がなかった。二人の間を、一粒の雨が上っていった。
「名前をなくした場所にも、人は帰ってこられる」
老人が開いた戸の向こうに、小さな庭があった。真ん中に、ノアの背丈ほどの大樹が立っていた。その枝にひとつだけ実が揺れている。
橋を渡った先で、ノアは自分を待つ誰かに出会う。
橋の向こうでは、雨が逆さに降っていた。
地面から空へ、銀色の滴が帰ってゆく。ノアの靴は少しも濡れなかった。窓辺の老人は種を見ると、長いあいだ探していた本を見つけたように笑った。
「その庭の名前を覚えているかい」
ノアは首を振った。老人は返事を急がなかった。二人の間を、一粒の雨が上っていった。
「名前をなくした場所にも、人は帰ってこられる」
老人が開いた戸の向こうに、小さな庭があった。真ん中に、ノアの背丈ほどの大樹が立っていた。その枝にひとつだけ実が揺れている。