彼は、橋から落ちた子どもを救った。
翌朝届いたのは感謝状ではなく、HERO Program からの照会だった。未登録の能力使用。現場への無許可介入。署名欄のない報告書が三枚。
「助けなければよかったんですか」
事務所に来た青年は、濡れた靴を脱がないまま尋ねた。レンはすぐには答えられなかった。誰かを救ったことと、決まりを破ったことは、同じ紙の上に並べられている。
「君がしたことを、まず聞かせて」
青年が話し始める。水の冷たさ。手を伸ばすまでの一秒。能力ではなく、怖さの話だった。レンはペンを置いた。今は報告書より、彼の言葉を残したかった。